米国がん協会がん予防ガイドラインに学ぶ・がん予防と再発防止の実践法

加工肉(ハム ベーコン ソーセージ)の習慣的な摂取はがんの原因となりうる

1. IARC(国際がん研究機関)による2015年の加工肉の発がん性に関する評価報告

WHO(世界保健機関)の下部組織であるIARC(国際がん研究機関)は、2015年に加工肉を「ヒトに対して発がん性がある(Group 1)」と分類しました。これは、加工肉の摂取と特定のがんとの間に十分な疫学的証拠が存在することを意味し、極めて高い発がんリスクが科学的に確認されたことを示しています。

特に、加工肉の摂取と関連が深いとされているがんとしては、大腸がん(結腸・直腸がん)が最も明確であり、他にも乳がんや肺がんとの関連も指摘されています。

IARCは、化学物質や食品成分、環境因子などの発がん性について、科学的根拠に基づいて発がんリスクの強さに応じてグループ1からグループ4までに分類しています(下表参照)。中でもグループ1は、「ヒトに対して発がん性がある」とされた最もリスクの高いカテゴリーであり、ここにはアスベスト、たばこ、プルトニウムといった広く知られた発がん物質が含まれています。 この報告が公表された当初、これらの物質と同じ分類に加工肉が含まれたことは、世界中の研究者や一般市民に大きな衝撃を与えました。加工肉は日常的に消費されている食品であるため、その発がん性のリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることは、がん予防の観点から極めて重要です

IARC 発がん性リスク分類(日本語版)
分類(グループ)分類名(日本語)意味代表例
グループ1ヒトに対して発がん性があるヒトでの発がん性について十分な証拠がある– たばこ喫煙
– アスベスト ダイオキシン
– 加工肉(ハム・ベーコンなど)
– アルコール飲料
– ベンゼン
– 紫外線(UV)  プルトニウム
グループ2Aおそらくヒトに対して発がん性があるヒトでの証拠は限定的だが、動物での証拠は十分– 赤肉(牛肉、豚肉、羊肉)
– 夜勤(交代勤務)
– グリホサート(除草剤)
– アクリルアミド
グループ2Bヒトに対して発がん性の可能性があるヒトでの証拠は限定的で、動物での証拠も不十分または限定的– 携帯電話の電波(RF-EMF)
– ガソリンエンジン排気
– 伝統的な漬物(アジア圏)
グループ3ヒトに対する発がん性について分類できないヒトおよび動物における証拠が不十分– カフェイン
– お茶
– 蛍光灯の光
– コレステロール
グループ4おそらくヒトに対して発がん性がない発がん性がないことを示唆する証拠がある– カプロラクタム(ナイロンの原料)※唯一の分類例