「医師監修」 米国がん協会がん予防ガイドラインに学ぶ・がん予防と再発防止の実践法

適正体重(BMI)を保つことががん予防に重要な理由 米国がん協会ガイドラインから解説

がん予防という観点から適正な体重を保つことは、数か月後に結婚式を控えた若い女性が結婚式のために短期間でダイエットすることとは本質的に異なります。がん予防のための体重管理は、半年あるいは年単位で効果を期待する姿勢が必要です。

つまり、「体重管理は短期間のダイエットではなく、長期的な生活習慣として取り組むこと」が大切です。世の中には「1か月で10kg減量する方法」などの根拠の乏しい情報が数多くあふれています。しかし急激な減量法は長く続けることが難しいだけでなく、かえって健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

現在のみなさんの体は、長年にわたる生活習慣の積み重ねによって形作られています。不適切な生活習慣が何年も続いた結果として体重が増えてきたのであり、それを1か月や数か月という短期間で急に改善できるはずがありません。適正体重を維持できる体質へと変わるには、ある程度の時間がかかることをまず理解することが大切です。

40歳を過ぎる頃から、「お腹の脂肪が気になる」「若い頃と比べて食事量は増えていないのに太ってきた」と感じる方は多いのではないでしょうか。年齢とともに太りやすくなる理由の一つには、加齢による体内ホルモン環境の変化があります。このような加齢による変化は避けることが難しい部分もあります。しかし、運動不足や不適切な食生活など、生活習慣によって生じる体重増加は改善することが可能です。避けられない要因は受け入れつつ、避けることができる原因を積極的に取り除くことが重要です。

肥満や過体重は、多くの種類のがんと関連することが研究によって明らかになっています。代表的なものとして、大腸がん、乳がん(閉経後)、子宮体がん、膵臓がん、肝臓がんなどが挙げられます2)。

肥満ががんの原因となる理由としては、体脂肪の増加によって体内で慢性的な炎症が起こりやすくなることが挙げられます。炎症は細胞のDNAを傷つける可能性があり、それががんの発生につながると考えられています。また肥満では、インスリンやホルモンの働きが変化し、がん細胞の増殖を促す環境が生まれることも知られています3)。

米国がん協会(American Cancer Society:ACS)のがん予防ガイドラインでは、がんリスクを減らすために「生涯にわたり健康的な体重を維持すること」が重要であると示されています。BMIが18.5〜24.9の範囲の体重ががんの発生が最も低いと多くのデーターから明らかとなっています。米国がん協会もがん予防の観点から成人は上記の範囲のBMIを維持することを推奨しています1)。*BMIの説明(外部サイトに示す)

私自身、膵臓がん・肝臓がん・胆のうがんを中心としたがん治療に30年間携わってきました。がんが進行して体重減少をきっかけに受診された患者さんを除くと、多くの患者さんはやや肥満から肥満の体型であったことを実感しています。

体重増加は食生活や運動習慣と密接に関係しています。高カロリー食品や加工食品の摂取が多く、運動量が少ない生活は体重増加につながるだけでなく、がんのリスクを高める生活習慣ともいわれています。米国がん協会のガイドラインでは、健康的な体重を維持するために、野菜・果物・全粒穀物を中心とした食事と定期的な身体活動を組み合わせることが勧められています1)。

具体的な内容については、本サイトの「食事から考えるがん予防」および「運動習慣は最強のがん予防である!」の記事も参考にしてください。

次回からは、適正体重を維持するための具体的な方法について、さらに詳しく解説していく予定です。

引用文献

1)Rock CL, Thomson CA, Sullivan KR, et al. American Cancer Society guideline for diet and physical activity for cancer prevention. CA Cancer J Clin. 2020;70(4):245–271.
https://doi.org/10.3322/caac.21591

2)Lauby-Secretan B, Scoccianti C, Loomis D, et al. Body Fatness and Cancer — Viewpoint of the IARC Working Group. N Engl J Med. 2016;375:794-798.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsr1606602

3)Calle EE, Kaaks R. Overweight, obesity and cancer: epidemiological evidence and proposed mechanisms. Nat Rev Cancer. 2004;4(8):579-591.
https://www.nature.com/articles/nrc1408