「がん予防には野菜を食べよう」とよく耳にするかもしれませんが、これは単なる噂ではなく、信頼できる医学研究でもその効果が裏付けられています。その中心的な働きをしているのが、「食物繊維」という栄養素です。
この記事では、信頼性の高い研究結果をもとに、なぜ食物繊維ががんの予防に役立つのか、そして私たちが日々の食生活の中でどのように取り入れていけばよいのかを、わかりやすく解説します。
食物繊維とは
食物繊維とは、野菜や果物、豆類、玄米や全粒粉のパンなど、植物性の食品にのみ含まれる「野菜・根菜類などのいわゆるスジ状の成分です。」「オクラのように粘りの成分」であることもあります。人の体では消化・吸収されず、腸までそのまま届く特徴があり、「腸のそうじ屋さん」とも呼ばれるほど、体の中で大切な役割を担っています。
食物繊維ががん予防に役立つ理由
第一に、食物繊維は腸内で発酵されることで「酪酸(らくさん)」という物質を作り出します。酪酸は腸の細胞を健康に保ち、またがん細胞の増殖を防ぐ働きがあることがわかっています。腸内の善玉菌のエサにもなり、腸内環境を整える効果があるため、体の免疫力を保つことにもつながります。
第二に、実際に大規模な研究や分析の結果、食物繊維の摂取量が多い人ほど大腸がんや胃がん、乳がん、子宮がんなどの発症リスクが低くなることが報告されています。例えば、大腸がんにおいては、食物繊維をよく摂っている人はそうでない人に比べて約14%リスクが低いという結果も出ています。
健康的な植物性の食事のすすめ
植物性食品を中心とした食生活が、がん予防に効果的であることも研究で示されています。特に、野菜、果物、豆、玄米などを多く含む食事が推奨されており、植物性であっても加工食品や精製された炭水化物、砂糖の多い飲料などは効果が見込めないことが指摘されています。
また、植物性食品の効果には個人差があり、男性の方が効果が出やすいという傾向や、大腸の左側(下行結腸や直腸)に対して特に予防効果が強く出ることも報告されています。
どのくらいの量を食べればいいのか
目安として、1日に野菜として300-400gグラム(目安として直径18cm-20cmのボール容器1杯分)の野菜・果物をとることが推奨されています。これは白米の代わりに玄米を選んだり、サラダや煮物を一品加えたり、間食として果物を取り入れるといった、日々のちょっとした工夫で達成することが可能です。
まとめ
食物繊維は、腸内環境を整え、がん細胞の成長を防ぎ、さらには免疫力を高めるなど、がん予防にとって非常に心強い味方です。特別なことをする必要はなく、いつもの食事に野菜や玄米、豆類を少し意識して加えるだけで、体は確実に応えてくれます。がん予防は今日からできる身近な一歩から始めることができます。
参考文献
- Aune D, et al. (2011). Dietary fibre, whole grains, and risk of colorectal cancer: systematic review and meta-analysis. BMJ, 343:d6617.
URL: https://www.bmj.com/content/343/bmj.d6617 - Guiu-Jurado E, et al. (2023). Use of dietary fibers in reducing the risk of several cancer types: An umbrella review. Nutrients, 15(12):2766.
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37299507/ - Dorans KS, et al. (2022). Vegetarian diets and the risk of gastrointestinal cancers: A systematic review and meta-analysis of observational studies. Frontiers in Nutrition, 9:1053860.
URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10538608/