米国がん協会の指摘にもあるように、「がんの多くは生活習慣と感染症によって引き起こされる」というメッセージには、科学的にも強い裏付けがあります。本記事では、影響の大きい2つのリスク要因(生活習慣と感染症)を初心者にも分かりやすく解説します。
まず、生活習慣について。国際的な前向きコホート研究およびメタ解析によれば、以下のような行動をとることでがん発症リスクが大幅に低くなることが示されています:
・たばこを吸わない
・適切な体重を維持する
・適度な運動をする
・アルコールを控える
・バランスの良い食事を心がける。
これら5項目すべてを実践するグループは、最も不健康な生活を送るグループと比較して、がんになるリスクが約29%、がんの死亡率は52%低いと報告されています1)。
次に感染症。世界全体ではおよそ16〜18%のがんが、ウイルスや細菌といった感染がきっかけで起こると推定されています2)。具体的には、以下が代表的です:
- HPV(ヒトパピローマウイルス):子宮頸がんや頭頸部がんの原因に
- B型・C型肝炎ウイルス:肝細胞がんのリスク大幅アップ
- ピロリ菌:胃がんとの関連が強い
これらの感染はワクチン接種や除菌、検査などによって予防・早期発見が可能です。
総合すると、「がんとの戦い」は以下の二つの事柄が重要です。
- 感染症の予防と管理:HPVワクチン・肝炎ウイルス検査・ピロリ菌除菌など
- 生活習慣の改善:禁煙・節酒・運動・健全な体重維持・バランスの良い食事
日々の行動や定期検診でこれらを意識することで、がん発症の大きなリスクを減らすことができます。私たちにとって“自分でできる予防”が、実はがんを遠ざける最強の武器になるのです3}。
引用文献
1. Fan W, Qian Y, Dong X, et al. Combined lifestyle factors, incident cancer, and cancer mortality: a meta-analysis of prospective cohort studies. Br J Cancer. 2019;121(8):724–731. https://doi.org/10.1038/s41416-020-0741-x
2. de Martel C, Georges D, Bray F, Ferlay J, Clifford GM. Global burden of cancers attributable to infections in 2018: a worldwide incidence analysis. Lancet Glob Health. 2020;8(2):e180–e190. https://doi.org/10.1016/S2214-109X(19)30488-7
3. Islami F, Goding Sauer A, Miller KD, et al. Proportion and number of cancer cases and deaths attributable to potentially modifiable risk factors in the United States. CA Cancer J Clin. 2018;68(1):31–54. https://doi.org/10.3322/caac.21440