最新のがん予防ガイドライン
がんは世界的に主要な死因の一つであり、その予防には生活習慣の見直しが重要であるとされています。2020年、米国がん協会(ACS)は、がん予防に関する最新のガイドラインを発表しました。日本ではまだまだがん予防のガイドラインにもとづいた医療が行われることはほとんどなく、「米国がん協会(ACS)がん予防に関する最新のガイドライン」の存在も広く認識されているとはいえません。本記事では、その概要をご紹介します。
1. 健康的な体重の維持
適正な体重の維持は、がん予防の重要な要素とされています。肥満は特定のがん(乳がん、大腸がん、肝がんなど)のリスクを高める要因の一つであり、過剰な体重増加を防ぐことが推奨されています。そのためには、バランスの取れた食事と適度な運動を継続的に取り入れることが求められます。

2. 身体活動の推奨
定期的な運動習慣は、がんのリスク低減に寄与するとされています。具体的な推奨事項は以下の通りです。
成人の場合
- 週に150〜300分の中強度の運動(速歩、軽いジョギング、サイクリングなど)
- または75〜150分の高強度の運動(ランニング、スイミング、インターバルトレーニングなど)
青少年の場合
- 1日1時間以上の中強度~高強度の運動
加えて、長時間の座位行動を減らすことも推奨されており、日常生活の中でこまめに体を動かすことが望ましいとされています。
3. 健康的な食事パターンの採用

食事の内容はがんのリスクに大きく関わるため、以下のような食事パターンが推奨されています。
推奨される食品
✔ 多様な野菜類(特に緑黄色野菜)
✔ 食物繊維が豊富な豆類
✔ 果物(果汁飲料ではなく、丸ごとの摂取が推奨)
✔ 全粒穀物(玄米、全粒粉パン、オートミールなど)
摂取を控えるべき食品
✖ 赤身肉・加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)
✖ 加糖飲料(炭酸飲料、砂糖入りのジュースなど)
✖ 高度に加工された食品(インスタント食品、スナック菓子など)
健康的な食生活を維持するためには、できるだけ加工食品の摂取を抑え、自然のままの食品を選ぶことが推奨されます。
4. アルコールの摂取制限
アルコールの摂取は、特に女性の乳がんリスクを含め、がん発症の危険因子の一つとされています。アルコールを完全に摂取しないことが最も望ましいとされていますが、摂取する場合は以下の制限を守ることが推奨されています。
摂取量の目安は日本酒で1合 ビール500mlまでに抑えることが重要です
飲酒量を適切に管理することで、がんのリスクを低減することが可能となります。
5. 禁煙
これらの生活習慣の改善により、がんリスクを低減し、健康的な生活を維持することが期待できます。
米国がん協会(ACS)は、がん予防に関する最新のガイドラインを意識した生活習慣を続けることでがんによる死亡率は大幅に低下することが予想されます。是非そのことを意識して欲しいと考えております。
参考文献
米国がん協会(ACS)2020年 がん予防に関するガイドラインhttps://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.3322/caac.21591