
がんを防ぐためには、どのくらい運動をすればいいのでしょうか?
最近の信頼性の高い研究では、特別な道具や激しい運動をしなくても、日常の中で少しずつ体を動かすことで、がんのリスクを下げられることがわかってきました。
世界保健機関(WHO)やアメリカがん協会では、がん予防のために「週に150〜300分の中程度の運動」または「75〜150分の強めの運動」をすすめています(1)。
中程度の運動とは、息が少し弾む程度の早歩きや自転車こぎ、軽い水泳などが該当します。これを1日30分、週5日続けるのが一つの目安です。
とはいえ、忙しくてそんなに時間が取れないという人も多いでしょう。
実は、最新の研究によると、1日にたった11分程度の軽い運動でも、がんを含む重大な病気のリスクを下げる効果があることが報告されています(2)。
たとえば、早歩きや階段の上り下りなど、短時間でも体を動かすことが大切なのです。
さらに、運動の量が多いほどがんの予防効果が高くなるという「量と効果の関係」も明らかになっています。運動する時間が長くなればなるほど、がんの発症リスクが下がる傾向があるのです(3)。
ただし、無理のない範囲で、日常生活に無理なく取り入れることが何より大切です。持続することがなにより優先されます。くれぐれもまずは無理なくできる範囲で行い。慣れるにつれて運動時間を徐々に増やすことが現実的です。
結論としては、「週に150分を目標に、まずは毎日少しずつ体を動かすこと」ががん予防の第一歩です。通勤の一部を徒歩にしたり、エレベーターではなく階段を使ったりするだけでも、効果は十分に期待できます。がん予防は、今日からの小さな習慣で始められるのです。
引用文献
1)Patel AV, et al. American Cancer Society Guideline for Diet and Physical Activity for Cancer Prevention. CA Cancer J Clin. 2020;70(4):245–271. https://doi.org/10.3322/caac.21591
2)Ekelund U, et al. Dose-response associations between accelerometry measured physical activity and sedentary time and all cause mortality: systematic review and harmonised meta-analysis. Br J Sports Med. 2023. https://www.bmj.com/content/366/bmj.l4570
3)Moore SC, et al. Association of Leisure-Time Physical Activity With Risk of 26 Types of Cancer in 1.44 Million Adults. JAMA Intern Med. 2016;176(6):816–825. https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2016.1548