
今回も「植物性食品」のがん予防効果についてお話します。
果物や野菜には「抗酸化物質」と呼ばれる成分が含まれており、体内で細胞を傷つける活性酸素を抑える働きがあります。2017年に発表された国際的な※メタアナリシスでは、果物と野菜の摂取量が多いほど、がん全体の発症リスクが有意に低下することが報告されています(1)。
次に注目されているのは「全粒穀物」です。日本食では「玄米」がこれにあたります。白米を精製する際にそぎ落とされる「ぬか」を含んだコメのことです。食物繊維ミネラル ビタミンが豊富に含まれています。
「全粒穀物」は特に大腸がんの予防に効果があるとされています。1日あたり約90gの全粒穀物を摂取することで、大腸がんのリスクが約17%低くなるとされています(2)。玄米であればちょうど茶碗1杯半ほどの量になります。
さらに、「大豆食品」も見逃せません。
大豆に含まれるイソフラボンという成分は、特に女性の乳がんリスクを下げる働きがあると考えられています。欧州の臨床栄養学雑誌に掲載された研究では、大豆の摂取がアジア人女性の乳がん発症リスクを有意に低下させることが報告されました(3)。
これらの結果は、植物性食品ががん予防に役立つ可能性を示す強いエビデンスです。毎日の食事に意識的に取り入れることで、私たちの健康を守る一助になるかもしれません。
まずはできるところから、サラダを一品増やす、白米に玄米を混ぜて食べる、味噌汁に豆腐を加えるといった小さな工夫をしてみてはいかがでしょうか。
注釈※メタアナリシス
一つのテーマに対して行われた複数の研究のデータを集めて、全体として本当に効果があるのか”をはっきりさせる研究手法。信憑性が最上位クラスの研究手法とされている。。
引用文献
1)Aune D, Giovannucci E, Boffetta P, et al. Fruit and vegetable intake and the risk of cardiovascular disease, total cancer and all-cause mortality-a systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies
Int J Epidemiol. 2017 Jun 1;46(3):1029-1056. doi: 10.1093/ije/dyw319.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5837313
2)Aune D, Chan DSM, Lau R, et al. Dietary fibre, whole grains, and risk of colorectal cancer: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. BMJ. 2011;343:d6617. DOI: 10.1136/bmj.d6617
https://www.bmj.com/content/343/bmj.d6617
3)Chen M, Rao Y, Zheng Y, et al. Soy and isoflavone consumption and breast cancer risk: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Eur J Clin Nutr. 2014;68(5):555–565.
DOI: 10.1038/ejcn.2014.43