
毎日の食事で生のまま野菜や果物を食べることが、がんの予防に役立つということが、多くの信頼できる研究で明らかになっています。
たとえば、大規模な調査をもとにした分析では、果物と野菜を1日200グラム多く食べるごとに、がんのリスクがおよそ8%も低くなることが報告されています。これは“生のまま”食べることで熱に弱いビタミンや抗酸化成分が壊れずに摂れるためと考えられています【1】。
実際に、特定のがんに対する予防効果もはっきりしており、胃がんに関しては果物や野菜を多く摂る人が摂らない人に比べて13%ほどリスクが低く、毎日100グラム増やすごとにさらに5%ほどリスクが下がるというデータもあります【2】。
さらに、肺がんのリスクについても、果物や野菜の摂取量が多い人ほど低く、喫煙者においてもこの傾向が見られるなど、がん予防の観点から見ても非常に有効な食習慣といえるでしょう【3】。
その理由は、野菜や果物に含まれる栄養素にあります。たとえばビタミンCやポリフェノールなどの抗酸化物質は熱に弱く、加熱によってその多くが失われてしまいますが、生のままであればしっかりと体に取り込むことができます。また、食物繊維は腸の動きを整え、発がん物質を体外へ排出する働きがあり、腸内環境の改善にもつながります。さらに、酵素や植物由来の健康成分(フィトケミカル)も熱で壊れやすいため、生のまま摂ることでそれらの成分を最大限に活かせるのです。
食べ方としては、朝のスムージーにバナナや葉物野菜を入れたり、昼食でサラダを一皿プラスしたり、おやつに果物をそのまま食べたりと、少しの工夫で無理なく「生のまま」を取り入れることができます。
がんのリスクを下げるには、まず毎日の食卓で「生の野菜と果物を意識して摂る」ことが大きな第一歩になります。加熱した料理にも良さはありますが、栄養をまるごと活かせる“生の力”を、ぜひ今日から取り入れてみてください。
引用文献リスト
- Aune D, et al. Fruit and vegetable intake and the risk of cardiovascular disease, total cancer and all‑cause mortality: a systematic review and dose‑response meta‑analysis of prospective studies. Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029‑1056. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28338764/
- Kermanshahi N, et al. Fruit and vegetable intake in relation to gastric cancer risk: a comprehensive and updated systematic review and dose‑response meta‑analysis of cohort studies. Front Nutr. 2023;10:973171. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2023.973171/full
- Vieira AR, et al. Fruits, vegetables and lung cancer risk: a systematic review and meta‑analysis. Ann Oncol. 2016;27(1):81‑96. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26371287/