米国がん協会がん予防ガイドラインに学ぶ・がん予防と再発防止の実践法

食事を変えることで行うがん予防

がんの発症には遺伝的な要因に加えて、生活習慣、特に食事が重要な役割を果たすことが明らかになってきています。米国癌学会(American Cancer Society:ACS)は2020年に「がん予防のための食事と身体活動に関するガイドライン(ACS Guidelines on Nutrition and Physical Activity for Cancer Prevention)」を改訂し、栄養と身体活動を通じたがん予防に関する科学的根拠を示しました。

このガイドラインでは、次のような食事に関する推奨事項が示されています。

下記の内容は別途 「食事から考えるがん予防」で詳しく解説する予定ですがまずは食事とがん予防に関した基本的な考え方をお伝えします。

野菜、果物、全粒穀物、豆類などの植物性食品を中心とした食生活が推奨されています。これらは食物繊維、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルを豊富に含み、大腸がんや乳がんなどの発症リスクを低下させる効果があるとされています。近年、食物繊維と腸内細菌との関係の研究が進んできており。食物繊維と腸内細菌の相互の関係によるがん予防効果に関する研究報告が多数発表されてきております。

がん予防の観点からジュースなどに加工されていない未加工の野菜 果物

を日常の食事にできるだけ多く取り入れてください。

赤身肉(牛肉、豚肉、羊肉)や加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)の摂取はできるだけ控えることが望ましいとされています。これらの食品は大腸がんとの関連が強く、国際がん研究機関(IARC)ではとりわけ加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)が発がん性の高い物質であると認定分類しています。

アルコールは、乳がん、口腔・咽頭がん、食道がん、肝がんなどの発症と明確な因果関係があることが知られています。そのため、男女を問わず飲酒量を制限する、あるいは可能であれば飲酒を避けることが推奨されています。

過体重や肥満は、多くのがんのリスク因子とされています。特に内臓脂肪の蓄積は、閉経後の乳がんや大腸がんのリスクを高めます。加糖飲料や高カロリー食品の摂取を抑え、適正体重を維持することが重要です。

これらの食事的な介入は、がんの予防だけでなく、心血管疾患や2型糖尿病など他の慢性疾患の予防にもつながります。したがって、日常の食習慣の見直しは、公衆衛生の観点からも非常に重要であると考えられます。


参考文献

  1. Rock CL, Thomson CA, Gansler T, et al. American Cancer Society guideline for diet and physical activity for cancer prevention. CA Cancer J Clin. 2020;70(4):245–271. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32562474/
  2. American Cancer Society.
     ACS Guidelines on Nutrition and Physical Activity for Cancer Prevention.
     ▶ https://www.cancer.org/healthy/eat-healthy-get-active/acs-guidelines-nutrition-physical-activity-cancer-prevention.html