
がん予防というと、食事や禁煙、定期健診などが注目されがちですが、実は「運動」こそが最も強力で手軽ながん対策のひとつなのです。毎日少しでも体を動かすことが、がんの発症リスクを下げるという研究結果が数多く報告されています。
米国の国立がん研究所などが発表した大規模な研究によると、中等度から高強度の運動を定期的に行っている人は、13種類ものがんの発症リスクが有意に低下していることがわかりました。具体的には、食道がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、大腸がんなどが含まれており、これは運動が全身の健康を支える証拠ともいえます【1】。
さらに、がんと診断された後でも、運動は再発の予防や死亡リスクの軽減に効果があると報告されています。特に乳がんや大腸がんの患者では、ウォーキングなどの軽い運動を週数回行うだけでも生存率が高まることが示されています【2】。
なぜ運動がこれほど効果的なのかというと、体内のホルモンバランスや免疫機能、炎症反応に良い影響を与えるためです。運動によって体重や血糖値、インスリンなどの代謝指標が改善され、それががんの発生を抑える要因となっていると考えられています【3】。
もちろん、激しいトレーニングを毎日する必要はありません。1日30分程度の早歩きや、週150分の軽いジョギング、あるいは階段を使うなど、日常のちょっとした工夫で十分に効果があります。
がんを遠ざけるために、今日からできる一歩。それは、運動することです。無理なく、自分のペースで、継続していくことが大切です。
引用文献
- Moore SC, et al. Association of Leisure-Time Physical Activity With Risk of 26 Types of Cancer in 1.44 Million Adults. JAMA Intern Med. 2016;176(6):816–825. doi:10.1001/jamainternmed.2016.1548
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2521826 - Friedenreich CM, et al. Physical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis: Meta-Analysis of Observational Studies. J Clin Oncol. 2016;34(3):293–300. doi:10.1200/JCO.2015.62.9352
https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.2015.62.9352 - McTiernan A. Mechanisms linking physical activity with cancer. Nat Rev Cancer. 2008 Mar;8(3):205–211. doi:10.1038/nrc2325
https://www.nature.com/articles/nrc2325