
運動は、がん予防の有効な手段として広く認識されています。
米国保健福祉省の2018年報告書では、4500万人以上の参加者を対象とした解析結果が紹介されており、体をよく動かす人は乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、膀胱がん、胃がん、食道がん、腎臓がんなどの発症リスクが10〜20%低下することが示されています。また、がん診断後の患者では、乳がん、大腸がん、前立腺がんの死亡率や再発リスクも30〜50%抑えられるという結果が報告されています。1)
次に、2023年に発表された欧米の大規模研究では、身体活動が多いグループでは乳がんリスクが約10%、肺がんで約6%、大腸がんで約7%、胃がんで約5%、肝臓がんで約17%低下すると報告されました。
運動量とリスクが比例して減る、いわゆる「用量反応関係」が明確に示された点が特徴です。 2)
さらに、米国国立がん研究所の報告によると、2016年に発表された126件の研究をまとめた解析では、運動量が最も多い人は大腸がんリスクが約19%低く、乳がんや子宮内膜がんでも20%ほどリスクが下がるとされています 3)
では、どのくらい運動すればよいのでしょうか?米国ガイドラインでは、週150分の中強度(ややきついウォーキングや軽いジョギング程度)または週75分の高強度運動が推奨されていますが、実際には軽いウォーキングや日常生活の活動でも効果が見られます。
50~70代の男女であっても、週に数回のウォーキングや軽い体操を継続するだけで、がんの発症率や死亡率は確実に低下します。
以上をまとめると、「運動はがんを予防し、がん治療後の生存率も改善する」という効果は、複数の研究で強く裏付けられています。
日常に無理なく運動を取り入れることで、私たちはがんとの距離を安全に保てるのです。
引用文献
- Physical Activity in Cancer Prevention and Survival: A Systematic Review and Update. JNCI Cancer Spectrum. 2018.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31095082
- Physical activity and cancer risk: a dose-response analysis for breast, colon, lung, gastric and liver cancers. Cancer Commun. 2023; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37743572/
- Physical Activity and Cancer Fact Sheet. National Cancer Institute. 2016. https://www.cancer.gov/about-cancer/causes-prevention/risk/obesity/physical-activity-fact-sheet. https://www.cancer.gov/about-cancer/causes-prevention/risk/obesity/physical-activity-fact-sheet?utm_source=chatgpt.com