運動はがんの予防効果があることが、数々の研究で明らかになっていますが、なかでも、特に予防効果が高いとされるがんの種類についてご紹介します。

2016年に発表されたアメリカ国立がん研究所を含む国際共同研究では、130万人以上のデータを分析し、運動ががんの発症リスクに与える影響を調べました。その結果、13種類のがんのうち、10種類で有意なリスク低下が確認されました。
とくに、結腸がん(男性)では24%、乳がん(女性)では10%、子宮体がんでは20%、**食道腺がんでは42%**と、明確な予防効果が示されています1)。
さらに、2020年の米国がん学会のレビューでも、腎臓がん、胃がん、膀胱がん、頭頸部がんなどにおいても運動との関連が見られました。
これらはすべて、週に150分以上の中程度の運動(早歩きや自転車など)を習慣にしている人でリスクが低下する傾向が強く報告されています2)。
中でも注目したいのが乳がんです。
乳がんは運動を習慣にすることで、閉経前・後ともにリスクを下げることができるとされており、特別なトレーニングでなくても効果があります3)。
「特別な運動」ではなく、日常的な活動を増やすことが、がんの予防にとって大きな意味を持つということです。毎日の生活に、早歩きや階段の利用、軽いストレッチなどを取り入れることで、複数のがんを予防できる可能性があります。
引用文献
1)Moore SC, Lee I-M, Weiderpass E, et al. Association of Leisure-Time Physical Activity With Risk of 26 Types of Cancer in 1.44 Million Adults. JAMA Intern Med. 2016;176(6):816–825. doi:10.1001/jamainternmed.2016.1548
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2521826
2)Patel AV, Friedenreich CM, Moore SC, et al. American College of Sports Medicine Roundtable Report on Physical Activity, Sedentary Behavior, and Cancer Prevention and Control. Med Sci Sports Exerc. 2019;51(11):2391–2402. doi:10.1249/MSS.0000000000002117
https://journals.lww.com/acsm-msse/fulltext/2019/11000/american_college_of_sports_medicine_roundtable.24.aspx
3)McTiernan A. Mechanisms linking physical activity with cancer. Nat Rev Cancer. 2008;8(3):205–211. doi:10.1038/nrc2325
https://www.nature.com/articles/nrc2325