
私たちが日頃“適正体重を保つ”ことは、実はがん予防という観点からも極めて重要です。まず、最近の信頼性の高い複数の論文を解析した、大規模メタ解析と呼ばれる方法をでは、過体重、肥満の程度が高くなるほど多くのがん発症リスクが上昇することが報告されています。
具体的には、肥満または過体重であることが全体のがんリスクを約10-20%増加させると報告されております。加えて過体重、肥満を改善させることは癌のリスクを下げるとされており、具体的には体重を5㎏以上減らすことでがんのリスクが20-30%低下したと示されています(1))。
次に、42万件以上の成人を対象に実施された長期追跡研究でも、若年期から長期間にわたって過体重または肥満の状態にあった人々で、18種類以上のがんリスクが高まっていたことが確認されています(2))。
これは「一時的に太るだけでなく、長期間にわたる「太りすぎ」が蓄積的に影響を及ぼす」という点を示唆しています。さらに、別の検討では「体重が増え続けている人ほどがんリスクが高く、逆に自然な範囲の体重減少がある人ではいくつかのがんリスク低減が見られた」とも報告されています(3))。
長期の太りすぎはがんのリスクを上げる可能性が高いということは幼少期から太りすぎないことを心掛けることは将来の子供の健康状態に対して重要な要素であると思われます。
太りすぎががんのリスクを上げる原因としては第一に、過体重・肥満状態では脂肪組織が慢性的な低レベル炎症を引き起こしたり、インスリン抵抗性、ホルモン異常、細胞の増殖促進といった変化を生じやすく、これらががんの発生や進展を助長するメカニズムが報告されています。第二に、適正体重を維持することで、がんの“土台”と言える細胞分裂や成長刺激が過剰にならないよう抑えられ、「がんの芽」が育ちにくい環境を作りやすいからです。第三に、万が一発症した際にも、太りすぎであると治療経過にマイナスに働く可能性も指摘されております。
まとめると、適正体重の維持は「がんになりにくくする」というシンプルながら科学的にも裏付けられた鍵であり、体重をただ“標準にする”というだけではなく、「太り過ぎない」「増え続けない」「可能ならやや減量する」ことががん予防戦略として有効と言えます。日常的にはバランスの良い食事、適度な運動、定期的な体重チェックなどが“体重管理”の基本です。健康的な体重を保つことは、がんを遠ざけるための大きな一歩となります。
参考文献
- Shi X, Deng G, Wen H, et al. Role of body mass index and weight change in the risk of cancer: A systematic review and meta‑analysis of 66 cohort studies. J Glob Health. 2024;14:04067. doi:10.7189/jogh.14.04067.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38547495
- Recalde M, et al. Longitudinal body mass index and cancer risk: a cohort study. Nat Commun. 2023;14:2027. https://www.nature.com/articles/s41467-023-39282-y
- Christakoudi S, Pagoni P, Ferrari P et.al. Weight change in middle adulthood and risk of cancer in the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition (EPIC) cohort.
Int J Cancer 2021 Apr 1;148(7):1637-1651. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.33339
