がんを防ぐ方法の一つとして「運動」がとても注目されています。最近の信頼できる研究では、運動をする人ほど、がんになりにくいことが分かってきました。ここでは、なぜ運動ががんの予防に役立つのか、その大きな理由を3つご紹介します。
1)体の免疫力が高まるから
運動を定期的に行うことで、体を守る「免疫」の力が強くなります。免疫は、ウイルスや細菌だけでなく、体の中でできたがん細胞を見つけて壊す働きもあります。
実際に、週に何回か体を動かしている人は、ほとんど運動しない人に比べて、がんになる可能性が下がるというデータもあります1)。
2)体の中の「炎症」をおさえるから
炎症と一言でいわれても理解しがたいとおもいます。ケガや風邪のときのように発熱 倦怠感などを引き起こす体の中で起きる反応のことです。ケガや風邪の時のように急激な変化でなく、程度は低いけど慢性的にこれらの反応がずっと続くことを慢性炎症といいます。具体的には体重過多・歯槽膿漏・慢性の感染症・などで生じます。
運動をすることで、これら炎症を引き起こす物質が減り、体の中の炎症もおさえられます。特に、大腸がんや乳がんでは、運動によってリスクが下がることが分かっています2)。
3)太りすぎを防ぎ、ホルモンのバランスを整えるから
体に脂肪が多すぎると、ホルモンのバランスが崩れてしまいます。また肥満は前述の慢性炎症の原因となります。
女性ホルモンの一種や、インスリンという物質が増えると、乳がんや子宮体がんなどのリスクが上がるとされています。
運動をすると脂肪が減り、慢性炎症の状態を改善する効果があります。またホルモンの量も安定しやすくなるため、がんの予防にもつながるのです3)。
世界保健機関(WHO)は、「週に合計150分くらいの中くらいの運動」をすすめています。たとえば、1日30分の早歩きを週5回するイメージです。無理なく、できる範囲で続けることが大切です。
特別なことはしなくて大丈夫
がん予防のための運動は、ジムに行かなくても、道具がなくても始められます。近所を散歩したり、軽く走ったり、自転車に乗ったりするだけでも効果があります。
さらに、運動はがん以外の病気の予防にもなりますし、気分もすっきりして毎日の生活が楽しくなります。心と体、両方の健康を守るためにも、ぜひ今日から少しずつ動いてみましょう!
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引用文献
1)Moore SC, Lee I-M, Weiderpass E, et al. Association of Leisure-Time Physical Activity With Risk of 26 Types of Cancer in 1.44 Million Adults. JAMA Intern Med. 2016;176(6):816–825.
https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2016.1548
2)Friedenreich CM, Ryder-Burbidge C, McNeil J. Physical Activity, Obesity and Sedentary Behavior in Cancer Etiology: Epidemiologic Evidence and Biologic Mechanisms. Molecular Oncology. 2021;15(3):790–800.
https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/1878-0261.12772
3)Ballard-Barbash R, Friedenreich CM, Courneya KS, et al. Physical Activity, Biomarkers, and Disease Outcomes in Cancer Survivors: A Systematic Review. J Natl Cancer Inst. 2012;104(11):815–840.
https://doi.org/10.1093/jnci/djs207